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「医師の働き方改革」は、医学部受験で狙われる!!

この記事の目次

    「医師の働き方改革」は小論文や面接で問われる可能性大!

     

    「長時間労働の是正」や「柔軟な働きやすい環境整備」などを目指す「働き方改革法案」が2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されています。

     

    その中で、自動車運転の業務(運送・物流業など)、建設事業、鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業、そして医師については、「時間外労働時間の上限規制」が5年間猶予されました。
    その期限が2024年4月になります。

     

    最近、「2024年問題」として、運送・物流業がよく取り上げられています。
    運送・物流業で、「残業」が規制されると、「物流がマヒしてしまう」と危機感を持って報じられています。

     

    建設業でも、遅れが目立つ大阪の万国博覧会で「残業規制を特別扱いしてほしい」との声も報じられました。

     

    マスコミでは運送・物流業、建設業がよく報じられていますが、「医師の時間外労働時間の上限規制」分かりやすく言うと「医師の残業規制」は、市民生活に切実な影響を与えそうです。
    現在の医療は、医師の献身的な長時間労働によって支えられている面があります。
    そういった状況の中、2024年4月から法的に医師の残業が規制されます。

     

    医師に長時間労働を押し付けるわけには行きませんが、課題も多く、非常に難しく悩ましい問題です。
    今後、医学部受験の小論文や面接では、医師の働き方改革について聞かれることが多くなることが予想されます。

     

    医学部受験の小論文の問題は医療人を目指す受験生を対象としていますので、医療に関するテーマもよく取り上げられます。
    医学部の教員が出題するなら、「医師の働き方改革」は聞いてみたいテーマでしょう。

     

    医学部の面接で面接官を務めるのは、医学部の教員です。
    総合大学であっても、医学部面接の面接官を他学部の教員が行うことはありません。
    医学部に迎え入れる受験生を選ぶための面接ですから、医学部の教員が面接官を担当します。
    「この受験生は、我が校の医学部生としてふさわしくない」と判断されれば、学力試験の結果によらず不合格となります。
    このことは、入試要項にも明記されています。

     

    医学部の教員にとって、「医師の働き方改革」は、まさに自分の問題です。
    当然、受験生に問うてみたいでしょう。

     

    この「医師の働き方改革」、「医師の時間外労働時間の上限規制」分かりやすく言うと、「医師の残業規制」について、詳細に理解する必要はありません。しかし、医師を目指す者、医療に関心を持っている者としては、「全く分かりません」では医学部合格は遠のくでしょう。

     

    医学部受験に向けて、「医師の時間外労働時間の上限規制」とは、どういうことなのか、どういった問題があるのか、などについて多少の知識は持っておきたいものです。
    恐らく、医学部の小論文や面接では、「難しい問題だけど、どうしたらいいと考える?」と医学部受験生の考えを聞いてくると思います。

     

    あくまで、医学部を目指す受験生ですから専門的に答えられる必要はありません。
    「自分としては、こうしたらいいと思う」で構いません。

     

     

    医学部受験で知っておきたい「医師の働き方改革」の要点

     

    ここから、医学部受験で知っておきたい「医師の働き方改革」「医師の時間外労働時間の上限規制」について、解説して行きます。

     

    現在の医療現場では診療時間外でも働いたり、本来は休日でも働く医師も少なくなく、医師の長時間労働が常態化しています。
    長時間労働の上に、休日の確保も難しい医師も少なくありません。
    このことが「医師の家庭生活を脅かしている」、とも言われています。

     

    今年の2月に、筆者は2週間入院しましたが特に若手の医師は、時間も休日も関係なく病棟にいたように思います。
    入院中に突発的なことが起きてしまいましたが、若手の医師がすぐに駆け付けてくれ迅速に処置をしてくれました。
    「いつも先生がいるから安心」でした。

     

    一方で、医師の健康や生活を守ることも欠かせません。
    「当直明けから引き続き36時間勤務」では、医師の判断力にも影響が出る恐れがあります。
    患者も、それは望んでいません。

     

    2024年4月からの、医師の時間外労働時間の上限規制は、A,B,Cの3つに分けられています。
    A水準は、全ての勤務医を対象としていて「年間の時間外労働時間の上限は960時間以下」とされています。
    B水準は、地域医療を確保するために長時間労働が必要となる医師を対象とし「年間の時間外労働時間の上限は1860時間以下」とされています。
    特定の高度な技能の習得のために長時間修練する必要がある医師や、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある研修医・専攻医はC水準とされ、「年間の時間外労働時間の上限は1860時間以下」とされています。

     

    これを実現するためには、いくつかの課題があります。

     

    一つは、ベテラン医師の中には、「医者の長時間労働は当たり前」と考えている医師がいることです。
    こういった考えが正しいかどうかは別にして、上級医がこういった考えを持っていれば、目指す働き方改革、長時間労働の緩和はなかなか進まないでしょう。

     

    もう一点、チーム医療が行われる中で実際には、「担当の患者は担当医が責任を持って状態確認を行う」ことが多く、必然的に医師の待機時間が長くなりがちです。
    これが看護師であれば、シフト制や役割分担が機能しています。

     

    チーム医療を維持しつつ、医師のシフト制や機能分担を進めることは簡単ではないのが現状です。
    限られた時間の中で十分な医療が行えるのか、という問題もあります。

     

    3点目として、医師は診療などの医療行為だけでなく、事務作業や研究、教育にも時間を割いていて、業務量が非常に多くなっていることが挙げられます。
    現実的に、本来の勤務時間内では仕事を終えることが難しく、仮に時間外労働時間の上限を規制してもその通りには行かないのではないかと危惧されています。

     

    新型コロナウイルス感染症への対応で、不眠不休で一般市民を守った医師も少なくありませんでした。
    こういった突発的な事案への対応も考えなければなりません。

     

    医師の長時間労働を緩和する一つの方策として、「タスクシフティング」が挙げられています。
    タスクシフティングとは、「医師の仕事の一部を他職種に分担してもらい、医師の負担を軽減させる」、というものです。

     

    例えば、看護師や助産師に医師の業務の一部を分担することなどが挙げられます。
    厚生労働省では医師の働き方改革の事例として、日本医科大学多摩病院や順天堂大学医学部付属静岡病院、福岡大学筑紫病院、神戸大学医学部付属病院の事例などを紹介しています。

     

    この他に、医師の長時間労働の緩和策として、電子カルテや患者の状態を見ることが出来るモニターシステムなどの「ICTツールの導入」や、妊娠や出産、育児などでキャリアを中断してしまい復帰をためらう女性医師が多いと言われる中、「女性医師への支援」、そして「医師の勤務管理体制の整備」などが言われています。

     

    ただ、医学部受験においては先に述べたように専門的な知識は必要ありません。
    医学部を目指す受験生として、医師が長時間労働とならざるを得ない現状を理解していて、これを解消しようという動きもあることは知っている、で問題ありません。
    小論文の先生は詳しく教えようとするかもしれませんが、あくまで受験勉強で忙しい受験生です。
    詳しい説明が出来る必要はありません。
    詳しい説明が出来たから医学部合格ということもありません。
    実際の医学部入試の場で、医師の働き方改革について聞かれれば、「こうすればいいように思う」ということが言えれば問題ありません。